Aono's Quill Pen

青野の鑑賞記録

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『おんな城主直虎』38回~武田襲来の顛末と龍雲丸の存在意義を中心に~

はじめに 38話ではとうとう武田が襲来し井伊谷を占拠しますが、あっという間に信玄が死亡し、隠し里の民は時を置かずして井伊谷に戻ることになりました。その間に高瀬の正体が明かされ、直虎の堺行きが中止になり、最後には虎松の帰還が描かれます。今話で…

『おんな城主直虎』37話~主人公の設定に関する制作者の思いと視聴者の期待のズレについて~

「空白の時空」を埋める通俗性 37話は井伊直虎の生涯の中で最も史料の少ない時期です。そこをこのドラマがどのように描くのか、以前から興味を持っていました。史実の制約の中でオリジナリティを出していくのは大きなチャレンジですが、史実の合間の「空白…

『おんな城主直虎』新ポスターに思う~38話以降に期待すること~

はじめに 新ポスター発表になりましたね。菅田将暉さんの清々しいビジュアルと、直虎の成熟した眼差しの対比に心が浮き立つのを感じました。新しいことが始まる高揚感が楽しくて、「第三幕」について何か書いてみたくなりました。そこでこのエントリでは、箸…

『おんな城主直虎』36話~全体構造からみた36 話の位置づけと直虎、政次の人物造形~

連続ドラマのリアルタイム各話感想を書くことの限界 36話を視聴して、あらためて連続ドラマを各話ごとにリアルタイムで批評することの難しさについて考えてしまいました。文学や映画の批評は作品を最初から最後までまるごと読んだり見たりして、時には何度…

『おんな城主直虎』35話「蘇りし者たち」~医療と宗教、そして聖霊の働きについて~

35話では様々な復活譚が語られました。龍雲丸、近藤、方久、政次、氏真、直虎。そのどれもが考察に値しますが、このエントリでは特に近藤と方久、そして政次の復活について考察したいと思います。前者は医療と宗教の関わり、後者は「政次とイエス」という…

『おんな城主直虎』34話~政次とイエス②二つの破壊とその予言~

【今後の史実に言及します。ご注意を】 34話の『聖書』アナロジー 34話感想は一つにまとめるはずでしたが、「政次とイエス」シリーズで思いついたことがあったので、備忘録的にまとめておきます。 「政次の死はイエスの死のアナロジーで語られる」という…

『おんな城主直虎』34話 二つの悲劇の交差点~直虎はなぜ<政次の死>を悼まないのか~

二つの悲劇 34話では、政次を失った後の直虎の悲しみと、気賀における民の殺戮という、静と動、個人と集団の二つの悲劇が同時並行に語られました。二つの悲劇は最後の直虎の幻想で交差し、来週の動きへとつながる予兆で話は終わります。 この二つの筋には…